第13章 初雪【高杉晋助】
結局情事の間、二人の間には会話はほとんど無かった。
でも凛も高杉も、それで満足していた。
「言葉が無くとも、伝わる思いがある。……私はそう信じておりますのよ。」
「そうだな…俺ぁ無駄は嫌いだ。」
裸のまま布団に入り、凛を脇に抱えたまま高杉は新しい煙草に火を点けた。
「(これから…忙しくなるだろうな。)」
高杉は頭の中で、日本をひっくり返す大事を考える。
「次はいつ来れるか分からねえ。」
「…え?」
いつも「次」なんて告げずに去っていくのに、珍しい。
「来れるかどうかすらも分からねえ。」
真っ直ぐと天井を見上げる高杉の目を見て、凛は高杉が何か意を決した事を読み取った。
「…あなた様の赴くままに。」
それだけ告げて凛は高杉が始めた着替えを手伝った。
そして最後に見送る時、凛は高杉の手をとる。
「何度雪がこの地に舞い降りようと、何度初雪を見るのを繰り返しても…私はいつまでもここでお待ち申し上げております。」
優しく微笑んだ凛に、高杉は息をのんだ。
あまりにも綺麗な笑顔だった。
高杉はグイッと凛の手を引いて、よろめいた凛を抱き止めて耳元で囁く。
「何度死の淵に立とうと…お前の為に戻ってくるさ。」
― 待っていろ ―
━ fin ━