第13章 初雪【高杉晋助】
高杉がもう一度空を見上げた時、今年初めて見る雪がヒラリと舞い降りてきた。
「どうりで寒いわけだ。」
「綺麗ですね。雨とは違って、静かにゆっくりと柔らかい雰囲気を纏って降りてくる様が美しい…。」
高杉の手のひらに落ちてきた雪が、月明かりに照らされて一瞬キラリと光って水に変わる。
「美しい…が、まるで人の命のように儚いもんだな。」
「溶けた水はやがて空気の一部となり、いつかまた空で雪となって地に落ちます。それもまるで巡りめぐる人の命のよう。」
「輪廻…現世は命の流れの一部ってか。前世にも来世にも興味は無え。だがその考え方も悪くない。」
時折チラリと見える、凛の思慮深さ。
そこも高杉の気に入る所だ。
凛はそっと高杉の手をとった。
「お手がこんなに冷たく…そろそろ部屋の中にお入り下さいまし。」
高杉は煙草の葉を捨てて立ち上がった。
「そうだな。体がすっかり冷めちまった。……温めてくれるんだろ。」
片目が隠れているが、それでも目が情欲の色に染まったのが分かる。
「勿論です。……御意のままに…。」
凛も艶やかに微笑んだ。