第30章 lovesickness 3 (月島 蛍)
私は涙を拭きアスファルトに座り込んで影山君に話をした。
貴「・・・さっきニュースで私と同じように事故にあった人がいたみたいなの。それでその事故を起こした人の処分が”5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 ”なんだって。たったそれだけで済むなんて、おかしな話よね」
影「そんなに軽いのか?!くそっ、桜井がこんなにつらい思いしてるのに俺はなんもできなくて・・・。ごめん」
貴「何で影山君が謝るの?ごめんね。こんなとこ見せちゃって・・・。気にしないで」
影「気にしちゃだめか?俺は、お前が困ってたり泣いてたりするのが嫌なんだ。それに他の男と帰ってたり、笑いかけたりすると気持ちがモヤモヤする」
影「俺は今までこれがなんていう気持ちなのかわからなかったけど、今ならわかる。俺はお前が好きだ」
貴「か、影山君?」
急な話で私は驚き、顔が赤くなった。
影「・・・わりぃ、お前がこんな時にする話じゃないよな。でも・・・伝えたかったんだ・・・。」
貴「わ、私・・・よくわからなくて」
影「もちろん、すぐ返事をしなくていい。でも俺を選んでほしい」
影山君は真っ直ぐに私の目を見てそう言った。記憶のある私だったらこんな時なんて言ったんだろうか・・・。考えているとポツポツと雨が降り出し屋上の床は雨水を吸い込んでいった。
影「雨か。病室に戻るぞ」
貴「うん」
影山君は病室まで私に付き添い、そのまま帰っていった。
意識を取り戻した私がなんとなく思い出したことといえば、一緒にいると居心地のいい人との”あの時間”だ。自分がそのままの自分でいられるような感覚・・・。
”あの時間”を一緒に過ごしていたのは誰なんだろう。
私の頭の中は霞がかかったようにぼんやりとしていて、顔も声も思い出せない”その人”が気になっている。
”その人”は影山君なんだろうか。でも何だかピンと来ない。
私は病室のベッドに坐り母が置いていったアルバムを開いて見ていた。