第30章 lovesickness 3 (月島 蛍)
つばさsaid
私が目を覚ました時、ここがどこか、私の側に居る人が誰なのか全くわからなかった。そしてここは病院で医師の説明を聞いて私が分かったのは”事故で記憶をなくしたこと”だった。
私には両親と兄がいた。私の記憶はすべてなくなっていたけど、家族は命が助かっただけでもよかったと涙を流し喜んでくれていた。
容体が安定し個室に移ると、友人や部活の先輩達がお見舞いに来てくれ、私は皆から自分がどんな人間だったのか聞きノートに書いていった。私は大事な思い出、いや、無くした自分自身を早く取り戻したい気持ちと泣きだしたい気持ちで一杯だった。
そんなある土曜日の午前、私は院内を散歩していた。待合室には大きなテレビのモニターがあり、その番組では私たちと同じような事故のニュースが放送されていた。
そして飲酒運転を起こした人の処分をアナウンサーが告げた。
”5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 ”
私は自分の耳を疑った。私は自分の記憶を無くし半分殺されたようなものなのにこんな軽い処分で済むなんて。私の中に怒りと悲しみが沸き起こり、いつの間にか屋上に走っていた。
途中私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたけど、私はどんどんと階段を上った。
そして屋上に着きフェンスをつかみ大声で叫びながら泣いた。
貴「あぁぁぁ~~~!!!」
その時後ろから声をかけられた。
?「桜井!どうしたんだ?!」
貴「いやぁぁぁ!!」
私は膝から崩れ落ち屋上の床に手をつくと涙がアスファルトを黒く染めていった。
影「落ち着けよ!」
声をかけてくれたのはお見舞いに来てくれた影山君だった。彼は私の両肩をつかみ心配そうに私の顔を覗き込んだ。
影「何があった?」