第28章 lovesickness (月島 蛍)
次の日の朝練。体育館の入口で中の様子をうかがう桜井がいた。
月「・・・入らないの?」
桜井は肩をビクリとさせ振り向いた
貴「あ、月島君!昨日はありがとう。えっと髪の毛、気になっちゃって・・・」
山「大丈夫、似合ってるよ桜井さん」
貴「山口君ありがとう」
入口で3人で話していると体育館の中から騒がしい声が聞こえ始めた。
田「うぉ~~!!桜井の髪の毛が!!」
田中さんの声に桜井は思わず後ずさりをする。
貴「に、似合わないですか?」
皆が入り口に集まってくる。
西「イヤ、さすが我らが天使!文句なく可愛い!!」
清「うん、すごくいい」
影(か、可愛い・・・)ソワ…
澤「かなり切ったなぁ。似合ってるぞ」
澤村さんは彼女の頭をくしゃくしゃ撫でた。
菅「あ~、大地ヌケガケ。桜井の髪、柔らかくて気持ちいいなぁ」
今度は菅原さんに撫でられてる。
・・・あ、何かムカムカするかも。
貴「あ、ありがとうございます」
皆に口々に褒められ桜井は顔が真っ赤だ。
日「つばさ長いのもよかったけど、短いのも似合うな!」
さっきまで笑みがこぼれていた桜井は日向にそう言われた瞬間、伏し目がちになり、無理やり口角を上げている。ほんと、バカにつける薬はないな。
月「ゴメン、桜井。絆創膏張ってくれない?」
貴「あ、部室にあるから」
僕は彼女の手を引き体育館の入り口から離れる。
月「じゃ、部室つきあって」
部室に入り桜井は救急箱を出して絆創膏を捜す。
貴「月島君、どこ怪我したの?」
月「嘘だよ」
貴「え?」
月「君が泣きそうだったから。清水先輩には言っておくから落ち着いたら体育館来れば・・・」
そういって彼女の方を見るとすでに涙腺が崩壊し、ポロポロと泣いていた。
月「ち、ちょっと?!」
あぁ、もう君が日向の事で泣くとこなんて見たくないんだよ。どれだけ君が日向の事を好きだったか思い知らされるから。
僕はいつの間にか彼女の腕をつかみ、抱きしめていた。小さくて華奢な身体、柔らかい髪、そして君の甘い香りに理性が飛びそうになる。