第28章 lovesickness (月島 蛍)
少し遠慮がちに桜井が声をかけてきた。
貴「あの、月島君。私まだ部の買い出しとか、いろいろあるからこのバリボーどうぞ。私、他の本屋さんで買うから」
月「部の買い出しなら付き合うけど・・・。僕もサポーター買うし」
貴「え?」
桜井はびっくりしたように僕の方を見た。
月「かさばるデショ。荷物」
貴「えっと、今の髪形に合う洋服とかも買おうと思ってるから、迷惑かけちゃうし大丈夫だよ」
月「店どの辺り?」
貴「実は勢いで来ちゃったから、ノープランなの。とりあえず、新しくできた大型ショッピングモールに行ってみようと思って・・・」
月「あそこ、店舗数多いから迷ってるうちに1日終わっちゃうよ。買うもの決まってるの?」
貴「・・・全然思いつかなくて」
月「・・・僕がいつも行ってる店でよかったら、レディースもあるし雰囲気的にその髪にも似合うと思うけど・・・。行ってみる?」
貴「いいの?私なかなか服とか決められないから時間かかっちゃうよ」
月「別に・・・。僕も新しい洋服チェックするつもりだったから・・・」
貴「で、では、お願いします」
桜井はちょっと困惑しているようだ。まさか僕がこんな事言うなんて思ってなかったんだろう。
もちろん僕だって、こんな事”らしくない”と思いながら、ショートカットにした君は前よりもずっと可愛くて、なんだか別れがたくて・・・。ちょっと強引だっただろうかなんて思いながらショッピングモールへと向かった。