第28章 lovesickness (月島 蛍)
月島said
今日は久しぶりのオフの日だから買い物に出かけた。本屋で最後の一冊の月刊バリボーに手を伸ばしたとき、女の子の手と重なった。
僕はその子を見て驚いた。胸の辺りまであった髪の毛を顎の辺りまでバッサリとショートカットにした桜井だったからだ。
貴「つ、月島君?こんなとこで会うなんてびっくりした」
月「・・・びっくりしたのは僕の方。髪切ったの?」
貴「うん、やっぱり変かな?」
月「別にいいんじゃない。・・・ねぇ、聞いていい?」
貴「何?」
月「髪切ったのって日向のせい?」
貴「・・・あの、えっと。月島君って・・・よく見てるね」
桜井は困ったように笑った。っていうか日向に彼女が出来た次の日に髪の毛切るとかって、わかりやすすぎデショ。
目も少し赤くて腫れぼったい。ずいぶん泣いたんだろうということは容易に想像がついた。
月「・・・日向に君はもったいないよ」
桜井は一瞬驚いたような顔をして下を向き、小さな声で”そうかな”ってつぶやいた。
なぜだろう、初めて出会った時から君の声はいつも僕の耳を捉えて離さない。君の声が聞こえると自然と目が君を追ってしまうんだ。だけど君と目があうことはない。君はいつも僕から視線を少し外しているから。
桜井が人見知りなせいもあるけど、僕に苦手意識を持っている事は前から感じていた。だから余計、日向にイライラするのかもしれない。