第15章 complex (及川 徹)☆
貴「あ、あの、及川さん」
及「何?」
貴「さっきはゴメンなさい。私、酷いこと言った・・・」
及「うん」
貴「・・・私、中学の時モデルやってたことで友達が離れて、人を信じられなくなって・・・カメラの前で笑うのが苦痛になったんです。それで及川さんが自分の好きなこと、バレーに打ち込んでいる姿を見て嫉妬した・・・ゴメンなさい」
涙が止まらない。自分の気持ちを人に話すなんてどれだけぶりだろう。
及「俺こそゴメン。ちょっとイライラしてたから。・・・もう泣かないで」
及川さんのきれいな長い指が私の涙を拭う。
・・・・ドキン。あれ?なんで?心臓の音が聞こえちゃいそうだよ。
及「つばさちゃんも、自分のやりたい事やればいいんだよ。周りが何言おうと関係ない。それにモデルをやってたから友達が離れたんじゃない。本音でぶつかれなかったからでしょ?もう、大丈夫。今日は本音で俺にぶつかって来たじゃない?」
貴「・・・はい」
・・・何だか今まで自分を縛っていた何かが解けていくみたいだ。
及「・・・今日は何だか素直だね。及川さんの事、好きになってくれた?」
貴「な、何でそう思うんですか?」
及川さんはすっと目を細め、いつもよりワントーン低い声で耳元で囁く。
及「眼がそう言ってる・・・」
及川さんの手が私の顎を持ち上げ、唇が重なった。
及「俺はとっくにつばさちゃんの事、好きなんだけど?」
貴「わ、私まだよく”好き”とかわからない。・・・でも、及川さんにこうされるの・・・嫌じゃないです」
及「う~ん。80点かなぁ。まぁいいや。もっと俺の事好きにさせてみせるから」
及「今日は送るよ」
及川さんが手を差し出す。私はその手を取った。