第15章 complex (及川 徹)☆
授業のチャイムが鳴り、その音で私はハッとした。
貴(及川さんに謝らなきゃ)
探してみたけれども、こんな時に限って及川さんの姿を見つけることはできなかった。
屋上にもいない。・・・部活が終わるのを待つしかないのかな・・・。
放課後、体育館入り口から中を覗く・・・。
あれ?及川さんいない。
岩「桜井何してんだ?」
後ろから声をかけられた。
貴「ひゃぁ!あ、岩泉さん。いえ、ちょっと・・・」
岩「・・・及川か?あのバカなんかしたのか?」
貴「いぇ、違うんです。・・・及川さんは悪くないんです。私が・・・」
涙がポロリと零れた。
岩「うわぁ、オイ、どうした?」
岩泉さんがオロオロしている。
岩「と、とりあえず、こっち来い」
岩泉さんは、私の腕を取り体育館裏の人目につかないところに連れてきてくれた。
岩「桜井、何があったんだ?」
貴「・・・私、及川さんに酷いこと言っちゃった。才能があって居場所がある人にはわからないって。自分のやりたいことをやってイキイキしてる及川さんに嫉妬した・・・」
岩「え~っと、話しがよく見えないけど・・・虫の居所が悪かったんじゃねぇの?まぁ、バレーに関しちゃアイツは才能があるって言われてるけど、それだけじゃない。アイツだって練習しすぎで笑わない時期だってあった。今のアイツは努力の賜物だよ」
貴「・・・やっぱり私、及川さんの事傷つけた・・・」
岩「そんなことで傷つくタマじゃねぇから大丈夫だって」
及「もー、岩ちゃん。つばさちゃんの事、泣かさないでよ」
後ろから声がし、肩を抱かれる
岩「泣かしたのは俺じゃねーよ。お前だろ?!」
及「つばさちゃん、二人で話しよ。あ、岩ちゃん監督にはうまく言っといて」
岩「何だよ、結局おいしい所はお前が持っていくのかよ」
岩泉さんはブツブツ言いながら、体育館へと戻っていった。