第15章 complex (及川 徹)☆
昨日はよく眠れなかった。そんな時に限って体育はマラソンかぁ。正直身体がキツイ。・・・よし、さぼっちゃお。
私は先生に”眩暈がするから”といって保健室へ向かった。
保健室の入り口には”会議中”の札が掛けられていた。ちょうどよかった、このままベッドにもぐりこんでしまおう。私は保健室のドアを開けた。
及「あれ?つばさちゃん、奇遇だね。いや、これって運命?」
私は物も言わずドアをぴしゃりと閉めた。
及「え、ちょっと、具合悪いんでしょ?入っておいでよ」
確かにこのまま授業に戻るわけにもいかない。私は渋々保健室へと入った。
及「昨日、来てくれてありがとう。待っててくれたら送ったのに」
貴「一人で帰れますから。・・・それより及川さんはどうしたんですか?」
及「う~ん、体育のバスケでちょっと足を捻っちゃったみたいなんだよね」
貴「そうですか・・・」
及「つばさちゃんは・・・もう、モデルはやらないの?」
貴「及川さんには関係ありません。っていうか、もうほっといてもらえますか?!」
私はイライラしていた。恵まれた才能、仲間そして自分のやりたいことを思いっきりできる”居場所”を持っている及川さんに・・・嫉妬しているのかもしれない。
嫌だ、これじゃ中学で私の事を妬んでいた子たちと一緒だ。
ベッドにもぐりこもうとした私の腕を及川さんが掴む。
及「どうしたの?なんで怒ってるの?」
貴「恵まれた才能だって、居場所だって何だって持ってる及川さんには分かりませんよ!!」
及「・・・俺に才能なんかないよ」
今までに聞いたことのない低い声。及川さんは私の腕を離し保健室を出て行ってしまった。
貴(・・・どうしよう。私、・・・最低だ)
私はその場に立ちつくし、いつの間にか涙が出ていて止まらない。すぐに追いかけないきゃいけないと思うのに足が動かなかった。