第15章 complex (及川 徹)☆
私は自分の部屋に入りベッドに大の字で寝転んだ。
・・・あんなに何かに打ち込めるなんて羨ましい。
私もモデルをやっていたけど、それは母の夢。母は生まれてすぐの私をモデル事務所に登録したんだ。私が物心つくころには、レッスンばかりで遊ぶ暇すらなかった。それでも、きれいな洋服を着るのは大好きだったから一生懸命レッスンを受け続けていた。
そして中学、読者モデルの仕事をつかみ雑誌に載る度に・・・私の周りから友人が一人二人と離れていき・・・親友と思っていた友人すらも離れてしまった。
そのころからカメラに笑顔を向けることが苦痛になっていた。
友達と思っていたのは私だけだったのかな?皆に合わせようと自分を押し殺して合わそうともした。でもだめだった。もうあんな思いは二度としたくない。だから私から他人に近づくことはない。
誰とも繋がれない事に寂しさはない、というと嘘になる。でもそれ以上にあの時の喪失感を味わいたくなかった。
・・・昼休み。誰かとご飯を食べるなんて、どれだけぶりだろう。
私は目を閉じ今日の事を思い出していた。