第1章 はじまりの春
そう言って私から
目をそらす二宮くん。
なんか、歯がゆくて。
もっとしゃべりたいのに
「あっ、にっ、二宮くんは
なっまえ、
なんていうんですか...?」
気がついたらこんなこと
聞いていた。
名前知らなかったって
言ってるようなもんじゃん...
『知ってるじゃないですか、
名前(笑)』
ほら、また笑顔
あひるぐちのせいで
笑うとほんとに
口元がかわいくなる。
細められる目からは
優しい光を感じる。
でもそのなかに
すごく深い悲しみも感じる。
知りたいっておもう。
二宮くんが
一瞬まゆをひそめる。
そんな動きさえも
なんだかかっこよくて
かってにドギマギする。
すると二宮くんが
机の中に入っていた
先生からもらった
クラスの座席表をだした。
あれ、これどこ
やったんだろ(笑)
『ほれ、ここ。』
二宮くんはプリントの中の
自分の席を指差して言った。