第3章 この気持ちを何と呼ぶ*紫原*
朝練やって、お菓子食べて、お腹いっぱいでうとうとしてたら、周りがざわついた。
あーあ、せっかく気持ちよく眠れそうだったのに。
どうやら最後の席替えらしくて、とりあえず適当にくじ引いたら、窓際の一番後ろでラッキー。
目が覚めちゃったからとりあえずアメ玉を口に入れてみた。
隣に人の気配を感じて見てみると、あんまり顔馴染みがない女子。
ちょうど目が合って、その子が驚いてたから、袋からアメ玉一つ渡してみた。
「あ…ありがとう、紫原くん。」
「俺の名前知ってるのー?」
すると少し強張っていた顔が和らいで、クスクス笑い出した。
「当たり前だよ。もう3学期なんだから。…私の名前知らないでしょ?」
当然知らない。だって話したことないしね。
でもちょっとだけ興味が湧いたから聞いてみた。
「うん。だから教えてー。」
「です。」
「よろしくねー、ちん。」
「いきなりあだ名呼び?」
「んー、だってそっちの方が呼びやすいしー。やだったー?」
「別にいいよ。紫原くんだと何故か許されるから不思議。」
ふわっと笑ったその表情に、何故か惹かれた理由がこの時はわからなかった。