第9章 *A guardian deity
―翌日 放課後―
「ツッキーくん、山口くん、先に部活行ってるね!」
「あ、うん!」
昨日試合だったこともあってなんだか落ち着かない私は、同じクラスの2人に声をかけて先に体育館へ向かうことにした。
何故だか今日は早くボールに触れたくてたまらない。
急いで着替えを済ませて、まだ誰もいない体育館へ足を踏み入れた。
…とは言え、ちょっと早く来すぎちゃったかもしれない。
ネット張りもボールの準備も終わったけど、未だ体育館には誰も来ていない。
「誰もいない…よね?」
辺りを見渡し誰もいないのを確認すれば、コートに空ペットボトルを置く。
そしてボールをひとつ手に取り、その反対側のエンドライン奥に立つ。
「…昨日の及川さんのサーブ、凄かったなぁ」
その場で何回かボールを弾ませ、意識を集中させる。
高くトスを上げて、飛ぶ…!
ドッ
ボールは弧を描き、空ペットボトルにヒットした。
手のひらにジンとくる痛みが心地いい。
「やった!一発で当てちゃうなんてやっぱ私す
「すげぇな」
1人で浮かれていると、体育館の入り口から声がした。
「か、影山くん、いつからそこに」
「お前がサーブ打とうとしてたときから」
気がつかなかった。誰もいないこと確認したつもりだったのに。
「…誰に」
「え?」
倒れたペットボトルを立て直しながら影山くんが呟いた。
距離があるため聞き取りづらくて聞き返すと、さっき私が打ったボールを拾いあげてぐるりとこっちを向く。
「誰に教わった?今のサーブ」
なるほど、そう聞きたかったのね。
「…独学、だけど」
いろんな選手を見て、真似して、ひたすら練習しただけ。
それを聞いた影山くんは一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに眉間に皺を寄せて口を尖らせながらズンズンとこっちに来てエンドラインに立った。
…もっと色々問い詰められるかと思ったけど、昨日の影響もあって闘争心に火がついてる彼にとってはそれどころじゃないみたいだ。