第8章 *New choice。
「影山にまで推されるなんて、相当上手いんじゃないスか!?」
「いやいやいや買い被り過ぎですって」
田中先輩が菅原先輩へかけた言葉にすかさず首を横に振る私。
事実、日向や影山くんが何故こんなに推してくれるのかが分からない。
例の練習の時だって、特に目立つこともせずあくまでも普通に練習相手になってただけなのに。
「……谷口さん」
「はいぃ!」
一人悶々としていると、今まで何か考え込むように黙っていた澤村先輩が口を開いて思わず身構える。
「正式なコーチが見つかるまでの間、俺たちの指導、頼んでもいいか?」
「え」
澤村先輩の言葉を耳にした瞬間、体の力がふっと抜けるのが分かった。
……今のは、聞き間違いじゃないよね?
「えっと……それはつまり、私がコーチ代わりになって皆さんの練習を見る……ということですか?」
「そういうことだ」
念の為確認すると、どうやら嘘や冗談の類では無さそうだ。そもそもこの人はこういう時に嘘をつくような人じゃないとは思っていたけど。
「もちろん、危険の及ばない範囲でだけどな」
それでもまだよく理解が出来ない。
生徒である私が仮にとはいえコーチだなんて、部活として成り立つのだろうか。