第7章 * "Great King"
―火曜日 放課後―
「すみません田中さんすみません」
田中先輩にペコペコと頭を下げる日向。
彼は今日もやっぱりド緊張していて、それが溜まりに溜まって田中先輩のジャージにリバースしてしまったらしい。
私はというと…もうあんまり意識がハッキリとしていない。
今の今まですっかり忘れてたけど、私は乗り物に弱い。
普段は酔い止め用の薬を飲んでなんとか乗り過ごしているけど、今日の練習試合が楽しみなあまりに薬を飲むことを忘れていた。
「谷口さん……顔色悪いな、どうした?」
一人で葛藤していると、菅原先輩が真っ先に気づいてくれた。
だけど、迷惑は掛けたくない…。
「…だいじょぶ、です……!」
「どう見ても大丈夫じゃなさそうなんだけど…!!」
「どうしたんスか」
「っ谷口さん!?だだだ、大丈夫!?」
菅原先輩の陰からひょっこりと現れる影山くんと日向も、どうやら心配をしてくれているみたいだ。
「平気…っ、日向は大丈夫……?」
「おれはもう全然大丈夫!…だけど…」
「…そっか、良かった」
"私も平気だ"と告げても未だ慌てふためく日向に、菅原先輩が"落ち着け"と声をかける。
「…谷口さんはとりあえず保健室に寝かせてもらおう」
「私なら大丈夫です…!だから試合を見……っ」
急に大きな声を出すと、目の前がぐらりと歪んだ。
体の力がふっと抜けて、頭がズキンと痛む。
―やば……倒れ…っ…