第5章 *Place to stay。~Chance~
―それから何度か失敗もしたけど、確実にトスの精度を上げていく影山くんと、信じて跳び続ける日向くんは、すごく楽しそうだった。
彼らの試合を見ているうちにだんだん去年見たあの試合のように、日向くんと影山くん……2人のプレーに完全に心惹かれていた。
絶対に負けたくないという気持ち。
何が何でも繋げてやるんだという根性。
仲間が繋いだボールを相手コートに打ち抜いたときの感動と興奮。
そしてチームメイトをお互いに信じ合う心。
それは日向くんや影山くんだけじゃない。
烏野高校排球部という存在自体…。
ここには私の求めていたモノが全て揃っていた。
ここでなら……烏野でなら、私もまたあの時みたいに羽ばたけるかもしれない。
閉じ込もっていた殻から抜け出せるかもしれない。
―3対3の結果はセットカウント2-0。
日向くん影山くんチームが見事勝利した。
…もっと、もっと見たい。
私もこの人たちと、この場所で、一緒に―…
「…菅原さん」
声をかけると、彼は「どうした?」と不思議そうに私に目を向けた。
「私に…マネージャーやらせてください」
「! 本当に!?」
「よろしくおねがいします!」
「…そっか、良かった」
勢い良く頭を下げると、菅原さんは少し驚いたように目を見開いたけど、すぐに爽やかな笑顔でそう言ってくれた。
そして早速澤村さんと清水さんを呼び、私のことを軽く紹介してくれようとした。が、こういうのは自分でやらなければ、と思ったから遠慮してもらった。
「1年4組、谷口綾乃です。
烏野高校排球部、入部させてください!」
「…勿論、大歓迎だな」
「慣れないうちは大変だろうけど、一緒に頑張ろうね」
「っハイ!よろしくおねがいします!」
やっと見つけた私の居場所。
もう絶対に失くしたくない、大切な居場所。
今日この瞬間から、私の素敵な高校生活が幕を開ける―――