第5章 *Place to stay。~Chance~
*綾乃side.
「手に当たったあああ!!!」
「"手に当たった"?それって………」
「……おい……今…日向…目え瞑ってたぞ…」
「「「はァ!?」」」
主将さんの説明によると、
ジャンプする瞬間からスイングするまでの間目を瞑っていて、ボールを全く見てない日向くんの掌ピンポイントに影山くんがトスを上げた……らしい。
確かに影山くんは凄い人だ。でも……
「なあ何!?今の何!?当たったんだけど!!
手に!!今!!おれの!!なあ!!」
「ぅオイお前ええ!!目え瞑ったって何だ!!」
「!?お前が"ボール見るな"って言ったんだろ!?
目え開けてるとどうしてもボールに目が行くから…」
「確かに言ったけどっ」
「でも今ので成功だろ!?何が悪い!!」
「それはそうだけどっ
100%信じるなんてできるか普通!?」
…そうだよ。
長年一緒にプレーしてきた人ならともかく、知り合ったばかりの…しかも日向くんにとって因縁の相手でもある影山くんを100%信じるなんて…
「だって今それ以外の方法わかんねえもん!!」
…あぁ、そうか。
日向くんには"勝利への貪欲さ"がある。
だから、今出来る事ならなんだってやるんだ。
たとえ何回失敗したって……もう一回、何度でも。
「―…っ」
また、胸が少しだけ痛む。
でもそれはさっきまでの痛みとは違って、私の背中を押してくれるような…そんな感覚だった気がした。