第5章 *Place to stay。~Chance~
「うぅ…全然タイミングわかんねえよ…」
あれから、ボールが手に当たらなくて豪快に空振ったり、当たったと思ったらネットに絡まって漁業スタイルになったりと、二人の速攻(?)は全然決まらなかった。
「………―あの
「影山」
バッ!とかグワッ!とか言いながら口論を始めた日向くんと影山くんを止めようとしたら、菅原さんが口を開いた。
「それじゃあ、中学の時と同じだよ」
「……?」
「あっ えーっと…」
「…日向は機動力に優れてます。
反射・スピード…ついでにバネもある…慣れれば速い攻撃だって…」
「―日向のその…"すばしっこさ"っていう武器
お前のトスが殺しちゃってるんじゃないの?」
…確かに、そうだ。
日向くんは決して技術があるわけではない。でも、才能はあると思うし日向くんそのものとしての素材はピカイチ。だからこそセッターはそれを引き出すことが重要とされる…。
「……俺も…お前と同じセッターだから
去年の試合…お前見てビビったよ。
ズバ抜けたセンスとボールコントロール!
そんで何より…敵ブロックの動きを冷静に見極める目と判断力!!
…俺には全部無いものだ」
「そっそんなことないっスよスガさ…
「田中。一回聞いとくべ」
「技術があって、ヤル気もありすぎるくらいあって
何より…"周りを見る優れた目"を持ってるお前に
仲間のことが見えないはずがない!!」
菅原さんの目は、まっすぐに影山くんを見つめていた。
私はセッターの経験は0に等しいから、セッターがどれだけ大変なのかは解りきってない。
だけど、これだけはわかる。
影山くんも菅原さんも…。
勿論他のチームのセッターもそうなんだろうけど、セッターは強くないと出来ないんだ。
いつだって仲間のことを信じて、繋げて…そしてひとつの"音"を創り出す。
……それが、セッターなんだ。