第8章 私が握る手
河「心遣い感謝いたすでござるよ。」
凛「気配からして、あなたかなり強いみたいだし。…高杉の下へ行くかどうかは私の問題だからね。」
河「同行していただけるか。」
凛「どこへ行くの?」
河「梅田屋という料亭でござる。」
凛「…今ご飯食べたばっかなんだけど…分かったわ。行く。ただ、お世話になった彼らに手紙を残していいかしら。」
河「行き先を告げられては困る。拙者が書くゆえ、言うでござる。」
そう言って屋根から音もなく降りてきた。
凛「…かなり奇妙なナリをしてるわね。」
河「それは何も拙者だけではないでござろう。」
凛「…確かに。」
河「さ、紙と筆は用意いたした。」
凛「じゃあ…」
万斎は凛の言葉をサラサラと書き留めていった。
河「…これだけでいいでござるか。」
凛「余計な事は言っちゃいけないんでしょ。」
河「…まあいいでござる。ここで来てくれなければ拙者が晋助に斬られるでござるよ。」
凛「その紙はこの手すりにでも結んどいて。」
河「では、行くでござる。」
凛と万斎は江戸の闇夜へと姿を消した。