第4章 新たな生活
女「今みたいな平和な時に生んであげていたら…おじいさんのカラクリを買って遊んであげたり出来たのにね…」
源「でも死んだと決まったわけじゃねえんだろ。どこぞで生きているかもしれねぇ。」
女「そうね…なら、おじいさん。頼めるかしら。」
源「なんだ。」
女「行きずりの女の子供なんて会えるわけないだろうけど、もし…もし会えたら…一緒にいられなくて、ごめんなさい。抱きしめてあげられなくてごめんなさい。でも…ずっと愛してるわ…って伝えてもらえないかしら。」
源「いや、構わねぇけどよ…おめぇさんがここで待てばいいじゃねえか。」
女「医者にもう残りわずかの命だって言われてるの。多分…近い内にこの世を去るわ。」
源「………。」
女「頼めるかしら。…我が子にもう会えないのは残念だけど…言葉なら残せるわ。」
源「…わかった。会えたら絶対伝えてやる。」
二人共、伝えられる可能性が低い事くらい百も承知だった。
女「ありがとう。恩にきるわ。」
源「待て。名前がわからん事には伝えられねえ。」
女「私は…一ノ瀬幸子。娘は一ノ瀬凛よ。」
それ以降、二人が会う事は二度となかった。