第2章 黒蝶(銀時side)
目が覚めた頃には、天人達は全員いなくなっていた。
焼け跡をくまなく探して…やけ崩れた一つの家から、焦げた凛の着物の切れ端が見つかった。
薄い桃色に美しい蝶が一匹刺繍された着物で、凛によく似合っていた。
見れば、刺繍された蝶の羽が焦げていた。
凛は…死んだのだと思った。
確かに、凛は強かった。
身体能力が凄かった。
特に、夜暗い中での動きはずば抜けていた。
人間、やはり暗闇では幾ばくか身体能力は低下する。
だが凛は違った。
闇に紛れてもなお強い彼女を…仲間内では黒蝶と呼んでいた。
天人達とたまたま同じ異名をつけていた。
だがあの美しかった黒蝶は…もういない。
あの笑顔は…二度と見れない…。