第2章 幼少期
騒がしいアカデミーの教室の中。
前世は一般人だった俺からしたら何もかもが新鮮で、とても楽しい。
でも、いっつも一人でいる“うずまきナルト”は不思議と授業以外にも興味を引く対象だった。
今日も今日とてイタズラをしてイルカ先生に怒られている。
怒られてもむくれるだけで、反省の色を全く見せないナルトに更に怒るイルカ先生。
ローテーション。エンドレス。
背後のチクチクとした女子の視線が気になります。先生。
♦︎
下校時間。
家に向かってのんびり歩いていると、商店街の隅に五、六人の年上の男達が固まっていた。
なんだか凄く気になって、さりげなく近づいてみると、その塊の中心に見えた金色に息が止まりそうになった。
蹴られたり、殴られたり、酷いと何か物まで投げられている。
惨い。
そして、それをさも当たり前かの様にやってのける男達と、見て見ぬ振りをする大人達が怖い。
気付いたら、勝手に体が動いていた。
「おい、何してる」
小さな体にそぐわない低い声が出た。
どうも、怒りが抑えられない。
真っ先に気付いたら一人の男がオレの姿を見るなり、肩を震わせた。
皆が皆同じ様な反応をした後、過呼吸の様になりながら逃げ去って行く姿を呆然と見送る。
え、なんもしてないんだけど......?
あ、それよりもナルトだ。
「大丈夫か」
小柄な金色に近付き、一番酷そうな傷に触れる。
「ぃって!」
顔を歪ませて体を震わすナルトは本当に痛そうで、すぐにカバンから兄さんが持たせてくれた包帯と消毒液を取り出して、簡単な治療をする。
前髪の隙間から覗き見たナルトの顔は、今にも泣き出しそうな顔だった。
♦︎
所変わって釣り堀の桟橋の上。
俺はぶらぶらと足を遊ばせて座り、ナルトは膝を抱えて体育座りをしていた。
「......いっつも、ああなんだ......」
小さく呟いたナルトの言葉は確かに俺に届いたが、あえて何も言わない。
それでも構わないのか、彼はポツリポツリと話出した。
「俺はただ、普通に歩いてただけなのに......いつも、あんなことされる......!俺も、皆みたいに普通に、歩いてた、だけ、なのに......!」
最後は嗚咽交じりに話した声にひどく胸が締め付けられる。
泣いている。いつも馬鹿みたいに笑っている彼が、泣いている。
それ程、辛いのか。