第2章 幼少期
(ナルトって、なんであんなに分身の術できないんだろ)
もうすっかり暗くなってしまったうちはの集落を家に向かってひた走る。
早く帰らないと、皆が心配する。
走り続けていると、ふと何かの気配を感じ、見上げる。
電柱の上に何かいたような気がした。
気のせいかと思い、もう一度前を見るとそこには信じられない光景が広がっていた。
「!!」
あちこちに倒れているうちはの人達。
壊れた店や家。
辺り一面血の海だ。
「何だよ......コレ.........」
呆然とそこに立ち尽くしていると、脳裏に母さんと父さんと、兄さんの顔が浮かんできた。
「っ!」
もし、もしも、万が一、皆が、家族が殺されていたら......。
その思いが俺の足を自然と速くした。
もっと、もっとだ。もっと速く走れないのか。
そんな思いが駆け巡り、遂に、家の前に着いた。
扉を開けて中に入る。
静かだ、電気が付いていない。
人がいる気配もしない。
もしかしたら、という願いも込めて父さんと母さんの部屋の前に来た。
「父さん?母さん?」
『っ、!来てはならん!』
父さんの、声だった。
久しぶりに名前を聞いた。それ程、切羽詰まっていたのか。
怖い。怖い......!
でも、行かなくちゃ。動け、動け!動け!!
震える足を進めて、扉を開ける。
そこには、父さんと母さんが重なる様にして冷たくなっている姿だった。
「父......さん?母さん......?」
その二人は、何も言わなかった。
いつもみたいに笑わなかった。
いつもみたいに喋ってくれなかった。
いつもみたいに『おかえり』って、言わなかった。
いつもみたいに、いつもみたいに、いつも...みたいに......!
何か、熱い物が頬を伝った。
「母さっ......!父さん......!......兄さん!」
苦しい。胸が、張り裂けそうだ。
まだ見ていない兄さんを思って、泣いた。
ふと、目を上げると。
二人の亡骸の向かう側に見える両足。
本能が言う、目を上げてはならないと。
でも、あげなくちゃいけない気がした。
「兄...さん......?」
そこに立っていたのは俺の実の兄。
うちはイタチが返り血を浴びた姿で立っていた。