第1章 The day when the life changes
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2/14午後。
私たちは美雪の前にいた。
午前中には叔母さんたちが来ていた。
その証拠に新しい花が凛と上を向いていた。
お香の煙は上がっていないのは、すでに燃え尽きたからではない。
お香は私たちが供える…いつしかそんなことになっていた。
私は鞄から箱を取り出し、墓前に置いた。
蓋を開ければ純白なホワイトチョコ。
そのチョコの白さと雪の白さが相混じって、なんだか眩しく思えた。
たまらなくなって、お香に火をつける。
ふわり。
ふわり。
煙と共に広がる甘さ。
そして心に浮かぶ美雪の笑顔。
彼女のように笑って安心させたい。
そんな気持ちはあるのに、笑顔も向けられない。無理矢理笑うことすら出来やしない。
頬の上にはえくぼの代わりに涙が伝う。
「成都…」
夕に名前を呼ばれて、その胸に飛び込む。
あの日から私は変われない。
周りが見れば真面目で大人びた子。
でもそれはみんなが植え付ける勝手なイメージ。
心の奥は子供のまんま。
でも夕は違う。
確かに子供っぽい。
それは自他共に認めている。
それでも夕は変わっている。
私なんか置いて、どんどん成長していく。
温かい腕に包まれながら、私の涙は溢れ続けた。
いつも夕の、決して大きくはない身体に甘えてしまう。
それをどこか心地よく感じる自分がいた。
その一方、幼さを冷静に客観視し続けている自分がいることも感じていた。