第1章 The day when the life changes
「大切な人の命日なの、2/14。」
私は正直に話した。
「おいっ?!」
驚いた夕の目がこちらに向くが、言葉でそれを遮った。
「ここにいるのは夕が信頼する仲間。いつも守っている仲間。そんな人たちだったら話してもいいと思うし、美雪だって喜ぶんじゃない?」
「ね?」と促せば、自分の中で葛藤でもしているのだろうか、考え始める。
その間、みんなは不思議そうにしていたが、誰一人帰ろうとはせず待っていてくれた。
ああ、素敵だな…。
しばらく経って、夕は顔を上げた。
「わかった。」
決意したその表情がかっこよくて思わず見ほれてしまう。
「だけど、俺が話すより成都が説明した方がわかりやすいだろうから…」
「やってくれるか?」と問われ、小さく頷いた。
「確かに夕は国語駄目だしね。」
この時浮かべた苦笑いは自分を落ち着かせたかったから。
そして私は話した。
なるべく細かく、美雪のことを知ってもらいたくって。
もちろんすんなりとは話せなかった。
途中で何度泣きそうになったか。
それでもみんな聞いてくれた。
『幼なじみ』という言葉は意識的に使わなかった。
代わりに『大切な人』という言葉を、使った。
もちろん私にとって美雪は大切な人。
変わりようのない事実。
でも夕にとってはただの『幼なじみ』じゃない。私以上に大切だって思ってるはずだから。
買い物の時に考えていた『バレンタインは物悲しくなる。』
あの言葉を訂正したい。
なんとなく悲しいなんて嘘だ。
美雪がいなくなったこと。
夕の気持ちが彼女にあることを思い知らされること。
幼いときのように私は笑えないこと。
こんなにも醜い自分に気がついてしまったこと。
理由なんてたくさんある。
本当は。
この喉が壊れるまで叫びたいくらい、悲しいんだ。