第1章 The day when the life changes
『慢性心疾患』
心疾患はがんに次いで死亡率の高い病気だ。
それが美雪の命を奪った病気だった。
早すぎる死をもたらした病気だった。
「…もう、七年もたつんだね。」
必要なものを揃えるために買い物しながら、思い出すのは美雪のことばかり。
まあ、この時期は彼女のことしか考えられなくなるのはあの日以来毎年のこととなっているのだが。
7年前のバレンタインの日。
忘れもしないあの日。
あの時の微笑み。
あの時の言葉。
あの時の病院の独特な匂い。
あの時の白い壁にあったシミが隠れミッキーみたいだなって考えていたこと。
どうでもいいことまではっきりと思い出せるのは、それほど美雪が大切だったということでいいだろうか。
でも。
最期の景色は、はっきりと思い出せない。
それは泣いていたせいで視界がぼやけていたせいだと思う。
だって最期の言葉はこの耳で聞いたのだから。
『私は…みんなに会えてよかった……、みんなに愛されて幸せ、だった…。人を愛せて、幸せ、だった……。ありがとう…!』
『生まれ変わって……2人とまた、遊びに来るから……』
貴女にはこの世界がどう見えていたのかな。
ぼやけていた視界で見えた美雪の笑顔。
なんでそこで微笑むのかな。
私達はあんなに泣いてたっていうのに。
美雪のことで何回泣いたと思ってるの。
今だってほら。
涙をこらえるのがやっとだよ。