第1章 The day when the life changes
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バレンタインは物悲しくなる。
そんな風に思う人はどれくらいいるのだろうか。
確かにチョコをもらえない男子諸君や、チョコに力をもらって告白したものの、成功しなかった女子たちはそう思うかもしれない。
でも私の場合は違う。
前に述べた場合だったら、他の誰か別の人や時間が解決してくれるだろう。…しないこともあるかもしれないが。
しかし私の望む人は遠いところへ行ってしまった。
私達を含めた彼女を愛する人を残して。
「…美雪。」
小さな声で彼女を呼ぶ。
もちろん、その声に答える人はいない。
唯一共感してくれるもう1人の幼なじみ…西谷夕もバレー部の練習でいない。
誰にもいえない気持ちを胸に私は1人歩く。
少し見渡せば赤やピンク、白などの可愛らしい色が街中に溢れている。
BGMにアイドルが歌うバレンタインの曲も通りを流れる。
この街の様子だけで口の中にはチョコレートの甘い味が広がるような気がした。
例えば梅干しを想像しただけで酸っぱく感じるように。
人間の脳はどうなっているのやら、私にはそんな専門的なこと、皆目見当もつかないが。
甘い味は、瞬間的に記憶を鮮明にさせる。
美雪が大好きだったホワイトチョコ。雪ように白いチョコを夕には内緒で食べたりもしてたっけ。
幸せそうな美雪の笑顔が浮かび、そのまま弾けて消える。泡のように。儚く。
あの時はもう戻ってくることはないって実感させられる。それがバレンタイン。
ほら。
バレンタインは物悲しくなる。