第2章 Forbidden Lovers
少しだけヒールのある靴を履けば、京治と同じ目線で世の中が見渡せた。
数㎝しか変わらないのに、一気に京治に近づいた気分。
世界がいつもより明るく見えるのはきっと貴方が隣にいるから。
「ほら、手。」
差し出された手に自らの手を重ねようとして、躊躇する。
今回は恋人としてのデート。それは理解している。
だが、もしもそれを見られたら?私たちはどうなってしまうの?
普通のカップルには無いこの不安が躊躇いになってしまっている。
「大丈夫だから。」
でも…という言葉は声にならなかった。
強引に繋がれた手の熱が、守ってやるって伝えてくれてたから。
心がいっぱいになって涙が流れそうになるのをぐっと抑える。
そうだ、せっかくのデートなんだ。2人でとことん楽しんで笑わなきゃ。きっと京治もそう望んでる。
電車に揺られ、見知らぬ土地に。
連れてこられたのは複合施設。
「ここなら色々楽しめるだろ。」
その言葉通り様々な施設がある。ショッピングも出来るし、カラオケも、ゲームセンターも、食べ歩きも…屋外には観覧車まである。
地図を見ただけで楽しくなるくらい。
「どこがいい?」
私に聞きながら地図を滑る人差し指が綺麗。伏し目がちな横顔もかっこいい。地図を見ていたはずの目は、いつの間にか京治を追っている。
「今日は京治の言うことを聞く日だから。」
動揺する気持ちを隠そうとすれば、拗ねているような声になってしまう。
その声に反応したように、繋がれたままの手に力がこもる。
「俺はどこでもいい。…成都といられれば、どこでも。」
にっと子供のように笑ったのを見て、つられて私も笑顔になった。
(私も…京治が隣にいるだけで幸せだよ。)
「じゃあ、2人の行きたいところ回ろっか。」
どうせなら幸せな時間をもっと幸せにしたいから。
「じゃあ…俺はここ。」
京治の指が示した場所に私たちは歩き出す。