第2章 Forbidden Lovers
時はあっという間に流れ、放課後。
逃げるという選択肢は(罰ゲームのために)無い私たちはとある教室に集められた。
「さあバレンタイン決戦!いよいよ結果発表です!」
玲奈の司会に野次馬たちはわあっと湧く。対照的に双子は苦笑。
チョコを数えるのは私たち自身じゃなかった。
私の貰ったものを玲奈が。
京治のは木兎さんが、玉入れのように数え上げていく。
それをぼんやり見つめておく。
なんでこんなに盛り上がっているのだろうなんて、今更考えながら。
「「35!36!37!!」」
二人の声がぴたりと止むと共に周りからはざわめきが起こった。
「え、同数?」
「そこまで揃うのかよ!」
玲奈と木兎さんの驚きの声が上がり、私も驚きが隠せなかった。
(じゃ罰ゲームは…!?)
「決着はつくはずですよ。」
今まで黙っていた京治がすくりと立ち上がった。そして私の目の前にやってくる。
「成都。」
名前を呼ばれただけなのに、本能的に危機を感じる。
「まだ貰ってないけど、成都から。」
「っ!」
バレてたのか…でもそれなら。
「京治の貰ってないし。くれないならあげる気ないし。」
少なくとも今は、と心の中で付け足す。
「あげたけど。」
「は?」
嘘だろ、という叫びを飲み込む。心でずっとくすぶっていた問題の答えが目の前でちらついたから。
「下駄箱…水色の箱…!」
不覚にもキュンときたあのチョコが京治からだと言うのなら、私の好みを理解しているのも、几帳面なラッピングも納得いく。
京治は肯定するように、挑戦的に笑った。
それに対して、私は唇を噛んだ。
私たちしかわからない状況に、周りは緊張感を含む沈黙を続ける。
(私の負けか。)
「…………はい。」
諦めて、鞄からチョコを取り出した。
「…し、勝者!赤葦京治!」
その様子を見てはっとした玲奈が勝者を告げる。
静寂。
そして歓喜。
ボルテージは一気に最高潮まで上り詰めた。
盛り上がりに反して京治は冷静だった。
そして私にだけ聞こえるように囁く。
「罰ゲームはーー」