第2章 Forbidden Lovers
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2/14。
勝負の日がやってきた。
カップルがいちゃいちゃする日にも関わらず、人知れずに付き合っている私は闘志を燃やしていた。
いっつも主導権を握られっぱなしの私が主導権を握ることができると思うだけで、にやにやを抑えられなくなりそうだ。
それに…
正直いうと負けたときが怖い。
客観的に見れば京治は優等生かもしれないが、考えが時々常識から外れている。
先日もれていた心の声が私の不安を掻き立てる要因でもあった。
なにをされるかわからないという本能的な恐怖は、冬だというのに冷や汗となって体を滑っていく。
言葉通り負けられない闘いがそこにある。
校門をくぐれば、「成都くん!」と名前が聞こえ、チョコを渡される。
私は王子スマイルで「ありがとう、嬉しいよ。」と返せば、女の子の黄色い声と男子からは羨望の視線が飛んでくる。
京治にも他の男子にも悪いが今日は誰にも負けない。
一年生にいくら有名なモデルがいようが負ける気はない。まあそもそも今日は来ていないだろうが。
下駄箱を開けるとそこもチョコで溢れていた。思わず苦笑いしてしまう。
もちろん負ける気はない。ないのだが女の子たちよ、これでいいのか。バレンタインとは愛を伝えるものではないのか。明らかに本命っぽいのもあるんだけど。このチョコを好きな人に渡した方がよっぽど有意義ではないか。
…私が言えることではないが。
一思いにそんなことを考え、もう一度苦笑し、チョコを確認する。
その中の一つに目を奪われた。
The 女の子なラッピングの中に、水色の箱が混ざっていた。
見た目で女の子からのものでは無いことがわかる。
丁寧で、私の好みをよく理解しているそれに、不覚にもキュンとする。
無記名だからどんな人がくれたのかはわからないけど、几帳面で素敵な人が想像できた。
何となく朝から嬉しくなったのは京治には内緒にしておこう。