第2章 Forbidden Lovers
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男女に関わらず浮き足立つ今日この頃。
バレンタインというイベントが周りの空気を浮つかせている。
だが私たちには関係ないこと。
兄妹そろって何にも変わらない日を過ごす…ハズだった。
「よっ、お二人さん!バレンタインのご予定は?」
私たちがそろって食堂で昼食を食べているときだった。
共通の友である玲奈に話しかけられたことで、本能的に嫌な予感が走る。
彼女の尊厳のために言っておこう。
彼女はいい子だ。それは間違いない。
所謂ムードメーカーで同級生からの信頼も厚い。
…ただ、世の中で騒がれるイベントというイベントをより盛り上げようとする癖がある。
今回だってそうだ。
『バレンタイン』なんて言葉がなきゃ私たちは身を固くする必要はない。
「例年通り。」
「成都に同じく。」
味噌汁を啜りながら答えると、「つれないなぁ。」といつの間にか私の隣に座っていた玲奈が頬を膨らます。
「せっかく、『赤葦兄妹はどちらがモテるのか?!バレンタイン決戦!』をしようと思ってたのに。」
面白い玩具が無くなったとでもいうように、両手を伸ばし、つまらないアピールをしてくる。
「というかタイトルにセンス無い。」
「わかりやすいじゃん!それともタイトル変えればいい?」
「「どちらにしろやるつもりは…」」
「面白そうっ!」
ない、という言葉を打ち消したのは私たちの会話を聞いていた周りの女の子たちだった。
「気になるもんね、やっぱ!」
「私、京治くん!」
「成都くん派!」
「選べないっ!」
本人たちそっちのけで盛り上がっていく食堂。
「ちなみに…お二人はどっちが多くもらえると思う?」
この状況を作り出した張本人がにやにやとしながら聞いてくる。
「私。」
「俺。」
「「………」」
変なとこで負けず嫌いが発動した私たちは黙り込んだ。
…もうヤケだ。
「いいじゃん、やってやんよ。」
「はぁ…わかった。」
京治も逃げられないと踏んで、同意する。
周りからはワァーと歓声が上がる。
一つのイベントがこうして大きく膨れ上がっていくのを見た玲奈は満足そうだった。
また彼女の手の上だ…。
平穏なバレンタインはやってこない。