第1章 The day when the life changes
美雪のお墓の前で、やっと私は笑うことが出来た。
「お帰り、美雪。」
笑顔といっても、涙は止まらなかった。
それでも私は心から笑えていたと思う。
ずっと握りっぱなしだった夕の手の力が強くなる。
「…どうしたの。」
「オレさ…」
「うん……」
嵐のような男と例えられるような人とは思えないくらい、ぽつりぽつりと静かに紡がれる声を不思議に思いながら、私もゆっくり相槌する。
「オレさ……成都が美雪の前で本当に笑えたら言う気だったんだ。」
「オレは成都が好きだ。オレがお前を一生守ってやる…!」
先ほど火をつけたお香のチョコレートの香りが妙に鼻につく。
甘い香りは私に、笑顔………そして、幸せを連想させた。
「私も好きだよ、夕のこと。」
「っ!ほんとか?!」
食い気味な彼に苦笑する。
「なんでここで嘘つくのよ。…好きだよ、夕のこと。小さいときからずっと…ずっと。」
今まで蓋をしてきた気持ちも、今ならさらけ出せる。
自分の幼さも、夕だったらきっと受け入れてくれるって信じてるから。
「嵐のような騒がしさも、
地のような安心感も、
空のような広さも、
山のように揺るがない意志の強さも。
そしてなにより…太陽のような暖かい優しさが好き。」