第1章 The day when the life changes
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「でも私…夕は美雪が好きだって思ってた。」
帰り道何となく聞いてみる。
私が先ほど渡したチョコをかじりながら、夕は答えた。
「確かに美雪も大切だけどな!」
「おや、いきなり浮気ですか~」
「げほっ…ちげぇよ!」
からかい混じりに笑えば、むせ始める夕。
そんな姿すら愛おしくて。
「あはっ!夕、可愛い。」
「可愛くねぇよ!………それにお前の方が……っ!」
「むぐっ。」
チョコを押し込められて、口の中には甘い味が広がる。
甘い味は笑顔を…幸せを連想させる。
醜い感情はチョコのように溶けていく。
小さく。小さく。
「変わらないな…」
美雪の笑顔も、夕の優しさも。
確かにそこにある何かを感じて、チョコの味を楽しんだ。
甘酸っぱい沈黙が辺りに広がる。
不意に真剣な顔つきになった夕が口を開く。
「俺はお前以外に惚れたことはねぇ。それはこれからも!ずっとだ!」
恥ずかしげもなくそう言い切った夕。
私の心は幸せに満たされた。
「あははっ!…私も誓うよ。夕を一生愛し続けるって。」
プロポーズのような言葉。
まだ高校生が言うのには重いかもしれない。
けれど、この言葉は変わらない。
変わらない何かがそこにあるように。
私は夕の左腕に、自分の腕を絡める。
2人の陰は寄り添うように、夕日に包まれていた。
2/14。
バレンタイン。
苦くて甘いチョコレートの日。
そして。
私の人生が変わっていく日。
《The day when the life changes Fin.》