第2章 始まり
カチャ
男の人に無言で紅茶を差し出す
「……有難うございます」
少し戸惑った様子を見せる
自分は隅っこのソファに体育座りをして座った
体育座りをしてしまうのは癖、というか何だかしてると落ち着くのだ
だけら座るときはいつも体育座り
授業中とかはやらないけど……。
翼「あの、何か用ですか」
「先程も申し上げましたが、本日よりこちらで翼様の執事としてお仕えさせて頂きます」
翼「執事雇ってない、帰って……」
するといきなり男の人は顔を伏せる
白い手袋を額に当て
下を向いているためか表情が読み取れない
セバスチャン「ふっフフフフッ……」
翼「何がおかしいんですか、警察……」
セバスチャン「いえ、ただ……貴方が私を呼んだというのに、私を追い出そうとする姿がなんとも笑いをそそる物でして……」
一つの言葉が突っかかる
あの男は呼び寄せたと言った
何のことを言っている?
全く記憶にない
翼「僕…呼び寄せてなんか……!」
セバスチャン「覚えがないとは言わせませんよ?」
後ろにいる
自分の耳元に掛かる甘い吐息と言葉
男の髪が僕の首に当たってくすぐったい気持になる
でも、この男は
さっきまで、ソファに座っていた
さっきまで、紅茶を飲んでいた
さっきまで、笑ってた
そして、今後ろから聞こえてくる声は
誰
セバスチャン「仰られていたではありませんか。貴方のその口から、私は願いを聞きましたよ」
突如、頭の中に流れ込んでくる映像
小さい頃の僕が両親に蹴られ殴られ泣き叫んでいた
昔の僕
息が
上手く出来ない……