第2章 始まり
あの後はセバスチャンと屋敷中を歩いた
一人で住むには広すぎる家
使ってない部屋は沢山ある。そのお陰で埃だらけ
掃除はセバスチャンがやると言っていた
とにかく今日は
翼「疲れた……」
キングサイズのベッドに仰向けに、大の字に寝転がる。ふかふかのベッドに僕の身体が包まれる
なんだろう
いつもとは違う疲れ
今日は色々なことがあったな……
目を瞑りながらそんな事を考えていたが
どんどん意識が遠のいていった
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゙お父さん、お母さん!! ゙
゙どうしたのー?翼 ゙
゙何かいい事あったのか? ゙
゙学校で金賞もらったよ! ゙
゙おぉ、すごいなー ゙
゙よかったわねー ゙
両親と三人で手を繋ぎ楽しそうに笑い、話す僕
それを嬉しそうに微笑む両親
一緒に買い物に行って、遊園地に行って、お祭りに行って……
懐かしい
楽しい
小学校低学年の僕の思い出
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「……いた、ぃ」
ドカッ
パシッ
ドンっ
「うぇーん……いだぃ……ょ」
「やだ………やめ…ッ」
いきなり変わった
あの優しかった両親が
いつも笑っていた両親が
僕を褒めてくれる両親が
全部、全部全部
消えた……
毎日毎日、学校から帰ってきたら蹴られ殴られの繰り返し
何度も叫んだ、声が枯れるまで
何度も泣いた、涙が枯れるまで
でも、いつからか
そんな事は無くなった
目の前に倒れている両親
冷たくなった両親の身体
動かなくなった両親の身体
もう、何もなくなった
………………
僕は全身黒い服を着ていた
目の前には二つ並ぶ両親の写真
笑っている゙優しい ゙両親の写真
木棺の中に寝ている両親
雪のように白い肌、それに同化する白い花
母の唇には血のように赤い口紅
そして、木棺の蓋が閉められた