第2章 始まり
両親は穴の中に入れられた
一つの、深くて、大きくて、冷たいところに
そして上に土を被せられた
その様子を
僕は無表情で見つめていた
感情のこもっていない瞳で
普通なら悲しいんだろう
涙が出るんだろう
でも僕は、涙なんて出なかった
悲しいとも思わなかった
其処には安心している自分がいたんだ
…………………………
…………………
…………
……
セバスチャン「…様……翼様」
翼「…………ん……」
セバスチャン「翼様おはようございます。朝ですよ」
翼「…ん」
目をうっすら開けば、カーテンを開けて僕を起こすセバスチャン
しかも、いきなり日の光に当たらないように、と
立ち位置まで考えている
僕がまた布団の中へ潜ろうとすると、見事にバサッと布団を引き剥がされてしまった
ムスッとした顔でセバスチャンを軽く睨むと、執事スマイルで「学校に遅れてしまいますよ?」と言ってきた。
僕は、あの笑顔がムカつく
ブツブツと文句を言いながらも布団から上半身を起こす
そして、目の前に紅茶の入ったカップを出される
受け皿を右手で、
カップを左手に持ち一口飲む
翼「…………美味い」ボソッ
久しぶりだな
こうやって朝起きてから紅茶を飲むのは
昔は毎日、こうしてたっけ
その後は豪華すぎる料理が出さた
昨日までの生活と違い過ぎて
頭が追いつくのに必死だった
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セバスチャン「制服をお持ち致しました。お召し換えを」
翼「ん」
それに対して、僕はめんどくさいので一言で済ませる
セバスチャンは僕の前に屈み「失礼します」と言い慣れた手つきでボタンを外していく
そして、新品のYシャツ、靴下、ズボン、ブレザーを着せていく
皴一つなく綺麗にアイロンがけされている制服を見て、凄い……と心の中で呟いた
これから、新しい生活が始まる