第6章 奇襲
【 菅原side 】
____一瞬
何が起きたか分からなかった。
体育館の壁を背にしていた悠が、やたら高い弾道のボールを上げたと思ったら
速い助走とともに跳ね上がった体は、あっという間にボールを捕らえていて。
綺麗に弧を描いていた体の後方から、降り下ろされたであろう左手は、ボールを捉える瞬間すらわからないまま、物凄い勢いをつけ反対コートへと飛んでいった。
瞬きをして次に目を開いた時には、大地の構えていた腕へと当たり、その体ごと弾き飛ばした。
____!?
だ、大地が吹っ飛んだっ…………!?
す、すげぇ威力…………
つか、及川とか目じゃないくらいの破壊力じゃねっ!?
…………………ぅ、わぁ………
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!
めっっっっっちゃっカッケェェエ!!!!
生銀鏡悠!
マジで、ヤバすぎだべっ!!
たった一瞬の出来事だったはずが、こんなにも全身が熱くなるほどのスーパープレーに、俺だけでなく、反対コートの日向たちも試合そっちのけで興奮している。
わかる………!わかるぜ、その気持ち……………!!!
だって
超カッケェもんな!!!
あ、
ここだけの話なんだけど……
実はさ、
俺、
始めてテレビでアイツのプレー観てから、ずっとファンだったんだよ。マジで。
だから、実は今この状況は半端なく嬉しいっつーか………これはもう俺の妄想が作り上げた偶像なんじゃねぇのっ!?ってくらい、ヤバイ状況なわけです。
録画したコイツの試合、
何度観たことか……
ポジションは全く違うけど、体格で負ける日本男子バレーの競技の中で、悠だけは唯一世界相手にも負けないと………いや、U-19の中では世界一のアタッカーとまで言われているぐらい、すんげぇスパイクを打つ男。
「…………満足してもらえた?………ま、一発目だからイマイチ勢いが足りなかったけど。」
__Longing.