第5章 好敵手
_____!!!
え、今さらりと酷いこと言ったよ!?
試合好きな俺から試合を取り上げるなんて………
監督の鬼っ!!人でなしっ!!←
ざわつく周囲の中、ベンチ入りメンバーを発表する監督。
ポンと叩かれた背中。
……岩泉の優しさに泣けそうです。
「まぁ、今回はさぁ、俺がクソ可愛い後輩を追い詰める姿を見て楽しんでいてよ。」
楽しげに微笑む及川の肩を軽く殴りながら、少し冷静さを取り戻した俺は、小さくため息を漏らす。
………分かってんだよ。本当はね。
"練習試合"っつーのは、あくまで実戦形式の練習のことで、勝ち負けは二の次であること。
俺が出たら"勝利"は確実なものとなるが、どちらの学校の選手にとっても練習にはならない。
だから監督は手を抜いてまでして練習試合に参加させずに、公式戦まで取っておくつもりらしい。
要は"飼い殺し状態の俺☆"ってやつだ。
実はこーゆーことは初めてじゃないからさ、分かってんだけど………
……………………やっぱ寂しい。
俺だけ"部外者"感を感じずにはいられないよね。
「___あほ。なんつー顔してんだ。バカ悠」
無意識に寄せられた眉間に、岩泉の人差し指が刺さる。
「うちの大事な切り札であるお前を練習試合なんかでそう簡単には他校に見せてやんねぇよ。……だからオメーの代わりに相棒である俺がスパイクぶち込んでくるからよ。…………大事にされてんだ。気づけよ……バカ。」
目を見開いたまま固まる俺。
何故こうも岩泉は俺の欲しい言葉を
欲しいタイミングでくれるのか。
冷たく感じていた世界がまた熱を取り戻していく。
こればっかりは本当に敵わない。
いつも、
いつも。
「……………ありがとう。」
ふいに目許に浮かんでしまった涙を見せまいと俯くと、頭をぐじゃぐじゃと掻き乱されて
「………バーカ。当たり前のこと、わざわざ言わすんじゃねぇよ。」
ニカッと笑う岩泉に吊られて笑った俺は、絶対変な顔になってると思う。
ありがとう。一。
__Importance.