第5章 好敵手
お互いの心の中をさらけ出した俺たちは、昔話に花を咲かせつつ、楽しい時間を過ごしていた。
「……でね!その影山っつークソ可愛い後輩がさ~、俺が死ぬ気で努力して出来るようになったことをすんなり出来るようになりやがってさ!もう、ムカツクったらないよっ!」
「…………そんなに凄いのか?そいつ。」
セッターとしての及川の素質は相当なものだと感じていた俺は、その及川が"天才"と呼ぶ"影山"という男に興味を抱く。
「だって、信じらんないくらい正確なトス上げるんだよ!?もう、気持ち悪~いってくらい!あーヤダヤダ。」
身ぶり手振りで主張を続ける及川。
色々と忙しいヤツだよな。本当。
「ふーん。じゃ、今度その影山ってやつのいるとこと練習試合とか組めねぇのかな?徹にそこまで言わせる"天才"ってやつを見てみたいわ。………つか、ソイツを完膚なきまでに潰したい。」
俺の言葉に目を見開く及川。
あ、"潰したい"は言い過ぎだったかな?
こいつにここまで言わせるくらいのヤツを相手に出来ると思うとワクワクしてきちゃったし。
だって、俺、
強いヤツと試合すんの大好きだしね。
やっぱ味わいたいんよ。
全身にブワッて、血が巡る感じ。
「…………それはだめ。」
真剣な眼差しで俺を見据える及川に、少し驚く俺。
「………………アイツは、同じセッターとして"俺"が倒す。」
その目から伝わる強い決意。
いい目してんじゃん。徹くんよ。
「……そ。じゃ、その他は俺がやっていい?」
ニィ、と笑みを見せると、及川もムカツク笑顔を向けてきて
「もっちろんだよ♪悠と俺とで美味しく料理しちゃおうよ。…………あ、忘れてたけど岩ちゃんもね。」
「ん。楽しみになってきた。」
そんなこんなで夜も更け、明日も朝練のある俺たちは就寝すべく、寝る準備を始めた。
……………が。
またしてもこのクソ及川が、俺の想像の斜め上をいくことを抜かし始めたわけで。
__Opponent to be defeat.