第8章 開幕
その日の夜、俺と及川は及川の持っていた烏野の試合を録画した、DVDを観ていた。
「………やっぱ、大地いいよなぁ。今のスパイクレシーブとか堪んないわな。それに、あのリベロのチビも凄ぇセンスイイし。」
機嫌よく声を上げる俺に、それとは正反対の顔つきをした及川がじっとりとした視線を向け、不快感を露にする。
「…………大地、大地って煩いよ。ちょっと黙ってて、聞こえないし。」
「…………拗ねんな、徹よ。………トスに関してはお前が一番いいんだからさ。」
さらり放たれた俺の言葉に、バッと顔をこちらに向け、目を見開く及川の目が揺れているのを感じたが、俺は敢えて気づかないフリをして。
「~~~~~~~っ///!!………あ、ありがと……う。」
「…………ん。」
溢れだした涙を拭いながら笑顔をみせる及川の頭をポンポンと撫でながら、再び視線をTVに映る烏野に戻すと、丁度聞こえてきた"オレンジ"の声。
"俺に来ーーいっ!!"
「………っとに、チビちゃんって元気だよねぇ。……大声だして頭悪そ~。………それにさぁ、この神業速攻の飛雄トス、正確すぎて本っ当気持ち悪いし。」
ぶつぶつと呟く及川の辛辣なコメントに乾いた笑いを返しながら俺は自分の中に生まれた違和感の正体を探っていた。
…………何だ?
普通の速攻と、この神業速攻の前____
何かが違うような………
考え込んでいた俺の顔を覗き込むようにしていた及川と目が合うと、どうしたの?、と声をかけられた。
そして再びTVの中の日向が速攻を打つべく跳ね上がっている。
"トスくれーーっ!!"
声の後に放たれたのは"普通"の速攻。
「…………声………か?」
TVに視線を向けたまま呟くと、不思議そうな顔をする及川。
「え…………?悠?どうゆうこと………?」
………何だ。
そうゆうことか。
悠くん、わかっちゃいました☆
___Discovery of a trigger.