第13章 【影】
シェリルside
* * * *
「…そこにいるの、誰?」
人の気配を感じ、私は影で防御壁を造りながら言った。
木影から現れたのは、見覚えのない青年だった。
けれど、影が、怒り狂っているように激しく揺らいでいる。
「ようやく見つけたぜ、シェリル」
「…私、あなたなんて知らないわ」
指を鳴らそうと右手を上げた瞬間、影が先に動いた。
無数の影の手が、鋭利な凶器となる。
だが、青年のボルグで弾かれ、影はバチンッと音を立てて消えた。
「アルストッ!!」
「ひっでぇ…、シンドリアでの事、忘れたのか?」
(シン…ド、リア…?)
ザザ…っ
『シェリル、ずっと傍にいて下さいね』
「―――――――っ?!」
砂嵐のかかったような映像、記憶。
ノイズかかった、知らない誰かの声。
影は私を護りながら、青年への攻撃を止めない。
黒いルフが視界に入った瞬間、再び映像が流れた。
『愛してます』
「―――――ぅ、わあぁああぁ゛あ゛あ゛っ!!」
頭を抱え、断末魔に似た声を上げる。
私は無性に怖くなって、ありったけの魔力をブレスに注ぎ、『瞬足』を使って逃げ出した。