第13章 【影】
シェリルside
* * * *
「次は、どこに行こうかな。…ねぇ、アルスト」
自我、アルストの意志を持った影は、いつもの優しい手で頭を撫でる。
サラクの国を滅ぼして、4年が経った。
容姿、声、身なりもすべて変えた。
「バカですよね、そろそろ、捕まえてくれたらいいのに」
『笑え、生きろ、生きろ…』
シエルとの約束を思い出し、私はギュッと袖を握り締めた。
世界中から追われている、犯罪者の私が、成し遂げることは、ただ一つ…。
周囲をチラついている青いルフが、憎悪で赤く染まっていく。
影は荒々しく揺れて、木をなぎ倒していく。
(シエルを堕転させた組織を、滅ぼすッ)
アル・サーメンを一人残らず殺していく、『組織狩り』。
こんなこと、続けていれば、自らも『堕転』してしまうことなんて分かっている。
でも、止まらない、止められない。
「アルスト。私、いつ死ぬと思う?」
影は、私を包んで慰めた。