第12章 【淡い夢】
ジャーファルside
* * * *
朝起きると、二日酔いで激しい頭痛がしており、昨日の記憶が飛んでいた。
自分の部屋は荒れており、書類はぐちゃぐちゃ、床にばらまかれている。
はぁー…、と長いため息をし、頭を手で押さえ、壁に手を付きながら歩いた。
(市街地から、どうやって戻ってきたんだ…っ?!)
まったくもって、記憶がない。
シンのような…失態を犯していないか、不安を抱きながら、私はシェリルの部屋に向かった。
(そういえば、あの時、彼女の姿がなかった気がする…)
「シェリル…」
おかしい、返事がない。
いつもなら、花のような笑顔でドアを開け、私の胸に飛び込んでくるのに…。
違和感は、嫌な予感に変わっていき、扉を叩いて名前を叫ぶが、まったく応答がない。
いや、人の気配すらもしていない。
「…バララーク・セイッ」
距離を取り、雷を纏った鏢をドアに向けて放つ。
双頭の蛇を模した鏢は、安易に閉ざされた扉を破壊した。
バッと中に入ると、シェリルの姿はなかった。
まるで、この部屋はずっと空き部屋だったかのように、何もない。
「シェリル……?」
手紙すらなく、何も残っていない。
ただ、喪失感に襲われ、立ち尽くすばかり…。
嘘だ、夢だ…覚めろと、何度も頭の中で繰り返し、自己暗示をする。
けれど、現実は虚しく、広く感じる部屋に私はいた。
「彼女は脱国したよ、ジャーファル」
「……? シン、何を言ってるんですか??」
体温がサァー…と、下がっていった。
きっと、今の私の顔色は真っ青だろう。
彼はそんな私を見ても、口から言葉を出すのを止めない。