第12章 【淡い夢】
ジャーファルside
* * * *
震えている彼女を抱え上げて、私の部屋に連れて行く。
ソファに座らせても、私の袖をギュッと握り締め、離さない。
恐怖に震えている彼女も愛おしいと感じる。
が、彼女をそうさせているのは私ではないと思うと、そんな歪んだ感情も何処かへ飛んでしまった。
「…シェリル、どうしたんですか。私に話して下さい」
「…さ…サラクの皇帝、は、私の双子の兄なんです…っ」
「――――――――っ…」
彼女はすべてを話してくれた。
サラクの皇帝は、自分に反逆する者はすべて、彼女に強制して殺させたこと。
国民を奴隷にして他国に売り払い、独裁政治を推し進めていること。
そんな皇帝である兄から逃げてきたこと。
そして、妹である自分を愛しているという事…。
「ジャーファル…、私、殺されるっ!!」
私の腕の中で、子供のように泣きじゃくっているシェリルが可愛らしい。
今すぐに、彼女の頬を濡らしている雫を舐めとってあげたい。
けれど、彼女の心中と空気を察すれば、そんなことできそうになかった。
ただ、優しく…、壊れないように抱きしめる。
「大丈夫ですよ、私がいますから…」
「…ジャーファル…っ」
誰が何と言おうと、シェリルは私のモノだ。
彼女を愛し、傷つけて、恐怖で縛り付けるのは…。
シェリルの心の中にいるのは、瞳に映るのは…。
私だけでいいのだから。
「私があなたを護ります。絶対に…――――」
―――――絶対に…、誰にも渡してなるものか…。