第11章 【優しさ】※脱線
「ジャーファル、朝だよ」
「……ん…」
彼からの要望で、名前を呼ぶ。
あれからというもの、彼が安眠できるのは私の部屋になってしまった。
ジャーファルの部屋は仕事場、私の部屋は安らげる場所。
疲れきったら、すぐに私の元に来る。
「さぁ政務官様。今日もお仕事頑張って」
「行きたくないです。シェリル、助けて下さーい…」
甘えるようになった彼が、とても子供に見えた。
こんなジャーファルを見るのは稀だ。
ソファに横になっているジャーファルの元に歩みより、しゃがんで髪を撫でる。
「私が好きになったジャーファルは、そんなんじゃないなぁ」
「……………」
「今回の仕事が終わったら、一緒に街にでかけてあげるから」
「行ってきます。約束ですよ、シェリル!!」
(……扱いやすい…)
袖で赤くなった顔を隠し、扉を勢いよく開け、自分の部屋に向かっていった。
いつからか、彼は私に対し、まるで初めて恋人ができたような態度をとるようになった。
以前のような歪んだ愛情は、まったく見ない。
『…シェリルっ、仕事手伝って下さい!!』
『今…あなたを抱きしめてもいいですかっ』
穏やかで幸せな毎日。
もうこれ以上、なにも要らない。