第6章 【かけられた呪い】
主より早く起き、着替えて身支度を整える。
彼の着替えも、残っていた書類もすべて終わらせた。
部屋を後にし、宮殿の外にある大広間でブレスに血を垂らし、叫ぶ。
「『瞬足』と『千里眼』の精霊よ 汝と汝の眷属に命ず。我が魔力を糧として我が意志に大いなる力を与えよ。…出でよ、『ルルーシュ』ッ」
ブレスから青い煙をまとった女性の精霊が現れ、私に跪く素振りを見せ、真っ直ぐな瞳を私に向ける。
左腕にできたジャーファルさんとの契約痕を見せると、小さくため息を吐いた。
「アルストは…死んだのねぇ?」
「私を一人前と認めて亡くなりました。新たな主、ジャーファルに忠誠を誓い、私は彼に従順に従う身です」
「…用件を」
「私に呪術をかけた人間を探すために、あなたの目を貸して欲しい」
首に巻いていた包帯を解くと、ルルーシュは目を細めてアザを見て、「古い呪術ですねぇ」と言った。
アザに指先を当てると、バチッと痛みが走る。
「アルスト様か、それ以上の人間の仕業でしょう…。私の目をお使いになられれば、すぐに見つかりますねぇ」
「ありがとう、ルルーシュ」
お辞儀をした彼女は煙と共に消え、私はつぶっている左目に両手を当て、再び叫ぶ。
「瞬足と千里眼の精霊、ルルーシュの名において、この目に彼女の力を宿せ」
左目が熱くなり、液体が溢れ出す。
地面に滴り落ちる雫を…開いている右目で見ると、それは血だった。
ルフを集中させると、重く開かなかった左目が開いた。
「…見つけた…っ」
「シェリルっ、そこで何をしているんです!!」
ジャーファルさんに見つかり、私は瞬足でその場より遠くに移動した。
辺りを見渡し、必死に私を探している彼が見える。
ジャーファルさんが、契約痕を使って私の居場所が分かるという事を知るのは時間の問題だ。
(頭良すぎる主を持つと、こうも厄介になるとは…)
「さすが…、この国の政務官殿」
右目を閉じ、彼を視界から消した。
今、私に見えているのは、術者の居場所だけ…。
ルフに私の声を託し、ジャーファルさんに届けさせる。
千里眼は、森の奥深い場所を示していた。
「すぐに戻ります、我が主」
そう言い残し、彼に背を向けて走り出した。