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【マギ】ジャーファルさんに愛されて。

第13章 【影】



「指輪です」

私の『青』と、彼の『緑』。
箱の中で、お互いの色が混ざっている、トルマリンの宝石が小さく輝いている。
あ…、と声を溢すと、彼は、かろうじて消えていない私の左手をぐっと引いた。

そして、薬指に、ゆっくりと入れる。


時が一瞬、止まったような感覚がした。



「シェリル。私の指にも、はめてください」

これ以上のない幸せを与えられ、私の視界は、酷く歪んでいた。
ぼろぼろと、熱い雫が溢れて、止まる気配がない。
「シェリル、しっかりして」そう言われ、ようやくジャーファルの指に通す。

「後を追ったりしませんよ。私はシンドバッド王に生死を共にすると誓った身。そして、この国の政務官です。逝きたくてもいけません…」

悲しそうに呟くジャーファルは、もう泣く事を止めている。
代わりに、目を腫らしながら、笑顔を作っていた。
両腕も下半身も消えて、もう、上半身しか残っていない私を、そっと優しく抱きしめる。

「すべて…、自分の責務を果たしたら、そちらに逝きます。だから、寂しくても、待ってて下さい」
「…ジャーファルっ!!」


――――ずっと、ずっと一緒にいたかった。


心を引き裂くような、一番の叫びを互いに隠す。
彼の瞳に、最後に映る自分は、せめて笑顔でいたい。
胸元まで迫る、『消失』の恐怖に怯えながらも、私は未練を残したくない一心だった。


「愛してます、シェリル。誰よりも一番、狂おしい程に…」
「私もよ…っ、愛してる、愛してる…ジャーファル」

互いに泣きながら、微笑みながら。


最後に口づけを交わし、私は消えた。
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