第13章 【影】
影side
* * * *
彼女の中にいるのは、僕。
知らないまま、気づかないまま。
彼女だと思って抱けばいい。
『…影、かげ…』
僕はシェリルが好きだった。
お前が彼女と出会う前から、ずっと、傍にいた。
ずっと、彼女を守りづつけてきた。
無能なくせに、シェリルに愛されている、
お前が妬ましかった。
『あぁ、もうダメみたい…』
ずいぶん前から、病に侵されていたのは知っていた。
運命なんて、残酷だ。
『影』の中を伝って、お前の部屋に着いた時。
無邪気で優しいシェリルは、死んだ。
狂おしい程に僕が愛したシェリルは、
愛しい人に会う前に逝った。