第1章 本編
私は身体を赤く染めた。感じてしまった自分が、とても恥ずかしくなった。
「ゃ…手放して、」
私は跡部の手を振り払った。すると意外にも、跡部は少し戸惑いの色を見せた。
『どうしてそんな顔をするの?』
私は跡部を見つめる。跡部は数秒目を合わせた後、ふいと目を外した。
「…そろそろ飯にする」
とても寂しそうな声だった。今にも泣いてしまうんじゃないかと切に思った。
「・・・・・」
忍足は何も言わなかった。ただ、私の手をじっと見つめていた。その視線が酷く刺さった。私は心が痛かった。
「ぉ、お腹空いたー」
私はついに静寂を破った。この空気はとても耐えがたいものだったから。大きなテーブルにたった3人だけでのご飯。跡部も忍足も何も言わないんだもの。流石に息苦しい。
「せやな…」
私の一言で、忍足はいつもの顔に戻った。よかった。
「ねぇ」
「あん?」
「食べてもいい?」
私は確認を取った。ここでの私の地位は下の下。よって、許可なく食べることはできないのだ。
「あぁ」
跡部は私を見つめる。よほどお腹が空いていたらしい私をじっと見ていた。
「うさぎこぼしとるがな」
忍足は私をみてクスクスと笑った。